2011/01/13

読書感想文

屋根裏の散歩者。異常と臆病を兼ね備えた人間が、徐々にその臆病を克服していって、しまいには人を殺してしまう、この一連の描写はさすが乱歩先生という感じで、非常にスリルがある。その異常性が犯罪的な方向に向いてしまうきっかけとなった明智先生が、最後にはふらりと現れてあっさりと解決してしまうのだけれど、この明智先生がまた、完全超人モードになる前の、人間観察に重きを置いた探偵という感じで、ボクの好みでもある。

ポケットにライ麦を。うーん、まあ面白かったけれど、色々言いたいことはある。オチは爽快ではある。報われない感はあるけれど…

三角館の恐怖。これはいかにもという感じの探偵物だなあと思った。スラスラと読めた。

花婿失踪事件。まあなんというか、色々わかりやすい話。しかし、三角館の恐怖を読んだ後に読むと、金と愛の関係について考えさせられる。

まだらの紐。スリルを楽しむ読み物という感じ。びびってるシャーロックホームズはなかなかよい。

第三の女。何とも大それた犯行!結局、殺人を防げてないんだよなあ、ポアロさん。

女には向かない職業。探偵というよりは、悲劇のヒロインとして描かれるコーデリア氏。22 歳という歳の割りに落ち着いた性格、明るいとはいえない回想、理不尽と不幸、更には時折見せる弱さ、悲劇のヒロインにはおあつらえだ。論理的な思考で犯人を追い詰める典型的な探偵に対して、理性的とはいえない振る舞いが許されていることが、物語上の女性の強みだなあと思った。後半は割りと駆け足だけれど、翻弄されている感があって寧ろ良い。コテージで襲われる下りの唐突さと鋭さには、ドキリとさせられた。
事件の後の、ダルグリッシュ警視に対する抗議の意味を考えると、何ともいえなくて胸が詰まる。なんとなくレミング氏の死は自殺であって欲しいと思う。長編では今のところ一番面白かった。

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